“ABCの歌”、昔と変わった?

英語

ABCの歌から見る英語

シンプルなはずの「ABCの歌」、いくつかのバージョンがありますよね。
この記事では、お馴染みの「ABCの歌」を英語講師の視点から少し深掘りしてみます。

日本でよく聞かれたバージョンとの違い

ABCの歌を聴きながら、思い出したことがあります。
私はアメリカの幼稚園に通っていたので、この歌を覚えたのはアメリカでした。
そして、帰国後に日本で久しぶりに聞いた時…、「知っているはずの曲なのに違う!!」とショックを受けたのです。
文字で書くとわかりにくいかも知れませんが、歌詞のアルファベット部分を比べてみましょう。

A, B, C, D, E, F, G, (ドドソソララソ)
H, I, J, K, L, M, N, (ファファミミレレド)
O, P, Q, R, S, T, U, (ソソファファミミレ)
V (and) W, X, Y, Z (ソソファファミミレ)

”LMN”のところがゆっくり、”N”で終わってる!

アメリカの幼稚園で覚えたのは、

A, B, C, D, E, F, G, (ドドソソララソ)
H, I, J, K, L, M, N, O, P, (ファファミミレレド)
Q, R, S, T, U, V, (ソソファファミミレ)
W, X, Y and Z (ソソファファミミレ)

(レレド)の3音で “L, M, N, O, P” までを一気に、「エレメノピー」というように歌い上げるパターンだったので、違和感を感じたのを覚えています。

英語では歌詞で韻をふむ

英語の歌詞では、rhyme と言って韻を踏むことが自然です。
日本では、ラップやヒップホップのイメージが強い脚韻ですが、英語の歌詞ではむしろ当たり前。
よく見るとこの「エレメノピー」バージョンのABCの歌にも韻が踏まれています。
赤文字にした各フレーズの最後の文字に注目してみましょう。
(不本意ではありますが)パッと見て分かりやすいように、あえて読み方をカタカナで添えてみます。

G(ジィー)
P(ピィー)
V(ヴィー)
Z(ズィー)

全て、(ィー)の音で終わっていて、韻が踏まれていることが分かります。

日本で聞かれるバージョンでは、残念ながらこの韻がなくなってしまっているんですね。

G(ジィー)
N(エヌ)
U(ユゥー)
Z(ズィー)

ただ単に「LMNOP」が早いから、日本人に分かりやすく発音するために「LMN」で終わるバージョンが出来たと考えられますが、英語の歌としては残念なことになってしまいます。

日本人が聞くLMNOPと英語ネイティブの発音差

「LMN」で終わるバージョンに慣れている人にとっては、「LMNOP」は「早い早い!何言ってるのか聞き取れない!」となるのだと思います。耳が付いていかなくて、頭が混乱する感じですね。

なぜ「エレメノピー」と聞こえるのかというと、音が繋がって聞こえる英語の音声変化のせいなのです。
これは、「リエゾン」と言って、日本人が英語を聞き取ることができない大きな原因と言われます。
例えば、”Check it out” が「チェキラッ」に聞こえたり、”Let it go” が「レリゴー」に聞こえたりするというと分かりやすいでしょうか。
英語に慣れていない耳には「早い!」「聞き取れない!」となってしまいます。

“LMNOP” の発音、(el-em-en-oh-pee) のハイフンを取って読むと、リエゾンが分かりやすいと思います。

実は、リエゾンでの読み方のほうが日本人にも馴染みがある果物があります。
“Pineapple” です。
これは “Pine(松)” “Apple(りんご)” から成り立つ単語なので、パインアップルという表記も見られますが、音が繋がってパイナップル となっても耳に馴染んでいますよね。
慣れてしまえば、自然に耳に入ってきます。

“and” の必要性

もう一つ、ABCの歌を日本バージョンにすることで失われてしまっている基本的文法があります。
英語では、3つ以上の並列にする場合、”apples, bananas and oranges” のように、最後の単語の前にのみ “and” を入れるというルールがあります。

ABCの歌の最後の部分も、日本バージョンでは最後ではない部分に “and” が入ってしまったり、”and” が無くなってしまったり、文法の基本とズレてしまっています。

アルファベットを覚えるためだけと思われている”ABCの歌”も、深掘りしてみるとこんなに深い!
小さい頃はここまで気にして歌っていませんでしたが、英語の文化や文法も取り込まれての歌だったのですね。
歌の最後の部分もいろいろなバージョンがありますが、あまりに種類が多いので、今回はアルファベット部分に絞りました。

YouTube で見られる ”ABCの歌” も、「エレメノピー」バージョンの方が多くなってきました。
幼児や児童に、どこまで伝わるかは分かりませんが、こういう細かいことが「語感」を習得するのには大切だと思うので、私は娘に「エレメノピー」推しでいきたいと思います。

ABCの歌のこれから

ところが!!

この記事を書くに当たって調べていたところ、なんと本場アメリカの “the ABC Song” の歌い方が、日本バージョンになってきているというではありませんか!

どうやら、アメリカの子供の耳にも「エレメノピー」で一つのアルファベットのように聞こえてしまうようで、混乱が起きるからという理由のようです。
日本で見られる YouTube などの動画サイトでも、今では「エレメノピー」バージョンの方が多くなっていますが、これからどうなっていくのでしょう…。

言葉は生きていると言われる通り、時代や文化によってどんどん変化していくものです。
「あたらしい(新しい)」という単語も、元々は「あらたしい」という読みが正しかったもの。
変わっていくことを間違いと決めつけず、柔軟にアップデートしていきながら、これからのABCの行く末を見守っていこうと思います。

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